事件番号:JP2004-0002

                          裁            定

    申立人:
    (名称)有限責任中間法人日本曳家協会
    (住所)〒102-0085  東京都千代田区六番町1番地恩田第二ビル
    申立人代理人弁護士  飯  島  澄  雄
        〒105-0003  東京都港区西新橋1-6-21ダイヤ虎ノ門ビル
                            東京虎ノ門法律事務所
    申立人代理人弁護士  飯  島  純  子
        〒105-0003  東京都港区西新橋1-6-21ダイヤ虎ノ門ビル
                            東京虎ノ門法律事務所
    申立人代理人弁護士  吉  住  仁  男
        〒100-6009  東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル35階
                            吉住仁男法律事務所
    ドメイン登録者名:
    (ドメイン名)NIHON-HIKIYA.GR.JP
    (名称)日本曳家協会インターネット部門
    (住所)東京都千代田区内六番町1番地恩田第二ビル
    (組織種別)任意団体
    (代表者名)西川善蔵
    (副代表者名)我妻悦雄
    (登録担当者)西川善蔵
    (登録担当者住所)〒526ー0823滋賀県長浜市常喜町1370番地
    登録者代理人弁護士  野  村      裕
      〒520ー0044 大津市京町3丁目4番12号アーバン21
                              滋賀第一法律事務所

  日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、
JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センター
JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立
書・答弁書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定
する。

1  裁定主文
    ドメイン名「nihon-hikiya.gr.jp」につき申立人へ移転せよ。
2  ドメイン名
    紛争に係るドメイン名は「nihon-hikiya.gr.jp」である。
3  手続の経緯
    別記のとおりである。
4  争いのない事実(なお証拠は念のために掲載した。)
(1)申立人の前身である「日本曳家協会」は平成9年3月27日、曳家とい
う技術をもつ業者らが重量物を移動する「曳家」という技術を世間に周知さ
せるため、また曳家工事を行ってきた会員の意見・情報交換、技術の向上の
ため発足した任意団体である。同団体は平成14年8月8日に「有限責任中
間法人日本曳家協会」(以下「協会」という。)となり(甲1参照)、現在の会
員数は43(法人・個人事業者含む。)である。
  協会の活動は年1回の総会・懇親会を中心に、海外技術研修会、平成10
年3月から会報紙「テコトコロ」を年2回発行(甲2参照)、平成10年から
は「民家フォーラム」に毎年出店し、「曳家」のデモンストレーションやパネ
ル展示などを行い(甲3の1、2、3、4参照)、また平成13年には札幌国
際住環境見本市にてパネル展示を行っていた(甲4参照)。また平成13年5
月からは「日本曳家協会」のホームページも作成し、インターネット上で公
開していた(ドメイン名、hikiya.gr.jp)(甲5の1、2参照)。

(2)代表者兼登録担当者(以下本件ドメイン名の代表者兼登録担当者を以上
のように簡略に表記する。)について
  ドメイン名「nihon-hikiya.gr.jp」の代表者兼登録担当者は、答弁書記載の
西川善蔵であるところ、代表者兼登録担当者は協会に所属していた会員であ
り(甲6参照)、平成15年5月からは協会のインターネット委員会の委員長
を務めていた(甲7参照)。平成15年11月には協会を除名されたが、除名
の効力については、申立人と代表者兼登録担当者間に争いがある。但し現在
代表者兼登録担当者は申立人の協会とは関係がなくなっている。

(3)「nihon-hikiya.gr.jp」を登録したいきさつ
    申立人は平成13年5月に株式会社インターリンクを通じて
「hikiya.gr.jp」というドメイン名を登録した。その後当該ドメイン名を利用
して「日本曳家協会」のホームページを作成し、インターネット上に公開し
ていた(甲4参照)。
その後、本件ドメイン名について、登録担当者と代表者を西川善蔵、副代
表者を申立外我妻悦雄とした本件登録が平成15年8月4日(2003年)
に為された。但しこの登録の経緯については争いがある。そしてそのドメイ
ン登録については、平成15年6月4日に、代表者兼登録担当者西川善蔵が
代表者である有限会社西川総合建設より、申立人事務局にドメイン名と共に
連絡された。
  平成15年11月15日、以前から協会理事長・事務局と対立していた申
立外協会会員我妻悦雄と代表者兼登録担当者は同日の総会をもって除名の決
議が為された(甲9参照)。但し決議の有効性については争いがある。
  その後申立人で日本曳家協会のホームページを改訂しようとすると、平成
15年8月4日の時点で、本件ドメイン名につき、登録者名「日本曳家協会
インターネット部門」、登録担当者「西川善蔵」、電話番号「0749-62
-4529」(登録者の会社の電話番号)で登録されていたことを初めて認識
した。
  その後、代表者兼登録担当者は本件ドメイン名を利用して「真日本曳家協
会」という団体名のホームページを作成し、インターネット上に公開してい
る(甲11参照)。

4  当事者の主張
(1)登録の経緯に関する当事者の主張
  a  申立人
  申立人の有するドメイン名は1年ごとの更新であったが、その更新が平成
15年5月であった。協会内では「日本曳家協会」という名前により近い
「nihon-hikiya」というドメイン名を取得したほうがよいとの話が出たため、
新たに登録をし直すこととした。
  そこで、協会は「nihon-hikiya.gr.jp」というドメイン名の取得を当時協会
のインターネット委員会の委員長であった代表者兼登録担当者に依頼した。
平成15年6月4日に代表者兼登録担当者は「nihon-hikiya.gr.jp」というド
メイン名で登録をした旨を協会の事務局長である塚本英敏に対して報告して
いた(甲8)。
  このような報告から塚本は協会名で「nihon-hikiya.gr.jp」というドメイン
名(以下「本件ドメイン名」という。)の登録がされているものと思っていた。
  なお「日本曳家協会」は、平成14年8月8日に「有限責任中間法人日本
曳家協会」として法人格を取得している。
b  代表者兼登録担当者
  申立人有限責任中間法人日本曳家協会が平成14年8月8日に設立された
が、申立人有限責任中間法人日本曳家協会の理事であり(甲5の2),同協会
インターネット委員会委員長に就任した代表者兼登録担当者は,再び,会長
である株式会社恩田組の代表取締役である恩田忠彌によるホームページの恣
意的利用がなされることのないよう,同協会会員のため,自費をもって,本
件下記ドメインの登録をすることにした。
            nihon-hikiya.gr.jp
  この登録において,「有限責任中間法人」における「co.jp」ではなく,
任意団体を表す「gr.jp」をもって登録したのは,上記のとおり株式会
社恩田組のための恣意的利用を防ぐためのものである。
  従って,当該ドメインは代表者兼登録担当者である西川善蔵個人のもので
あり,代表者兼登録担当者西川はこの個人のドメイン利用の便益を申立人に
与えたものにすぎない。
(2)登録者に関する当事者の主張
  a  申立人の主張
    ドメイン名登録者
    氏    名:日本曳家協会インターネット部門
    住    所:〒526-0022  滋賀県長浜市常喜町1370内
  なお、申立人は、申立当初にドメイン名登録者は、「日本曳家協会インター
ネット部門こと西川善蔵」としていたが、上記のように訂正した。
    b  代表者兼登録担当者の主張
  本件申立書は代表者であり代表者兼登録担当者である西川善蔵に対して送
達されたが、西川善蔵は自身が登録者であると主張している。即ち西川善蔵
は
  ドメイン名登録者
      氏    名    西川善蔵
      住    所    〒526ー0823滋賀県長浜市常喜町1370番地
                                                であると主張している。
(3)登録者のドメイン名が申立人が権利または正当な利益を有する商標そ
      の他表示と同一または混同を起すほど類似しているか。
  a  申立人
    ①  申立人は表示の「nihon-hikiya」(読み方「にほん  ひきや」)の使用
      について権利または正当な利益を有する。
        申立人は平成9年3月から「日本曳家協会(にほんひきやきょうかい)」
      という名前で活動しており、その活動は曳家工事を行う業界の中では広
      く知られている。また、「日本曳家(にほんひきや)」という言葉を使っ
      た協会・団体は登録者が平成15年12月につくった「真日本曳家協会」
      以外にはない。また、申立人は「日本曳家協会(にほんひきやきょうか
      い)」という名でフォーラムに参加したり、会報紙を発行したり、ホーム
      ページもインターネット上で公開していることから、「nihon-hikiya」(に
      ほんひきや)の使用について権利または正当な利益を有するといえる。
    ②  同一又は混同を引き起こすほどの類似性があるか。
        申立人は平成9年3月から「日本曳家協会」の名前で活動しており、
     「協会」という文言は団体を表わす一般的なものといえるので「日本曳
     家(にほんひきや)」という言葉が主たるものといえる。そして、本件ド
     メイン名中「gr.jp」は当該ドメインがJPNICの管理のもので、かつ登
     録者がグループであることを示すにすぎず、多くのドメイン名に共通す
     る要素であるから登録者のドメイン名において主たる識別力を有するの
     は「nihon-hikiya」(「にほん  ひきや」と読むのが通常である。)の部分
     といえる。したがって、本件ドメイン名と申立人の表示とは称呼を共通
     するものであり、全体として類似するものである。

  b  代表者兼登録担当者
        争う

(4)登録者がドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有するか。
  a  申立人
      登録者は上記権利又は正当な利益を有しない。
      代表者兼登録担当者は元協会会員であり、平成14年8月に有限責任
    中間法人となったのをきっかけに協会内に①インターネット委員会、②
    出版委員会、③技術委員会、④広報委員会ができ、代表者兼登録担当者
    は①のインターネット委員会の委員長となった。平成15年春以降、代
    表者兼登録担当者と協会の方向性や意見の食い違いが顕著となり、同年
    10月に代表者兼登録担当者は協会を混乱させる内部分裂行動に出たた
    め、同年11月の理事会において代表者兼登録担当者は除名となった。
      代表者兼登録担当者は協会のインターネット委員会委員長として協会
    のために本件ドメイン名を登録すべきであったにもかかわらず登録した
    と協会に思わせ、その地位を利用し本件ドメイン名をそのまま自己のも
    のとして登録していること、及び本件ドメイン名に対応する名称を協会
    が平成9年から使用していることを知りつつ本件登録を行っているので、
    本件ドメイン名の登録について正当な権利、利益を有するものではない。

  b  代表者兼登録担当者
      本件ドメインは代表者兼登録担当者である西川善蔵個人のものであり,
    代表者兼登録担当者はこの個人のドメイン利用の便益を申立人に与えた
    ものにすぎない。
      申立人は,当該ドメイン登録について「インターネット委員会の委員
    長であった登録者に依頼した」旨の主張をするが,これは事実に相違す
    る。上述したように,当該ドメイン登録は,申立人協会に加盟する会員
    の公正な利益を追求するため,代表者兼登録担当者個人のものとして登
    録したものであり,この結果,申立人は登録およびその後の使用に関す
    る諸費用を,一切,負担することはなかった。従って本件ドメイン名は、
    代表者兼登録担当者が登録したものであり、正当な利益がある。

(5)登録者のドメイン名が不正な目的で登録又は使用されているか。
  a  申立人
      代表者兼登録担当者は現在、本件ドメイン名を利用して、協会と類似
    する「真日本曳家協会」という団体名のホームページを作成しており、
    協会会員や閲覧者を混乱に陥れている。特に、協会は本件ドメイン名を
    登録できたと思っていた平成15年夏以降、日本曳家協会のホームペー
    ジとして「http://www.nihon-hikiya.gr.jp」と会報紙において公表して
    いたことから(甲12参照)、会員らが当該URLにしたがってホームペ
    ージを訪れると全く別の団体である「真日本曳家協会」という団体のホ
    ームページに到達してしまうということが生じている。かかるホームペ
    ージの存在は会員らに対し、協会に対する不信感をつのらせ、協会の活
    動を混乱させるものといえる。
      したがって、代表者兼登録担当者が協会の事業を混乱させることを主
    たる目的として、当該ドメイン名を登録しているといえ、代表者兼登録
    担当者のドメイン名が不正な目的で登録又は使用されているものといえ
    る。

  b  代表者兼登録担当者
      代表者兼登録担当者は、申立人の協会の正常化を図ったが、これ以上
    正常化を図ることは無理と判断した代表者兼登録担当者は,新たに同業
    者の真の利益を追求するための同業者団体として「真日本曳家協会」を
    設立することとした。従って代表者兼登録担当者のドメイン名が正当な
    目的で登録又は使用されている。

(6)申立人の求める救済処置の内容と相手方の認否
   a  申立人
       本件ドメイン名登録につき申立人への移転を求める。
   b  代表者兼登録担当者(登録者)
       申立の棄却又は却下を求める。
       (但し登録者の明確な答弁は無かったので、善解した。)
5  争点および事実認定
  方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないことを
指図している。
  (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標
その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
  (2)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有して
いないこと
  (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

(1)本件ドメイン名の登録者は代表者兼登録担当者か?
    本件当事者間では、申立人が登録者は、「日本曳家協会インターネット部門」
であり、住所は、東京都千代田区内六番町1番地恩田第二ビル、代表者は西川
善蔵、登録担当者は、西川善蔵と主張している。
  これに対し、代表者兼登録担当者は、西川善蔵個人が登録者であると主張し
ている。
この問題は、登録者適格の問題なので、パネリストは当事者間の主張に左右
されず認定する。
    ところで、甲15によれば、組織名は日本曳家協会インターネット部門で
あり、住所は東京都千代田区内六番町1番地恩田第二ビルであり、組織種別は
任意団体であり、代表者名は相手方である西川善蔵、副代表者名は我妻悦雄で
ある。
  そして、このドメイン名の登録時(平成15年8月4日)に申立人は既に法
人格を取得しており、申立人の有限責任中間法人日本曳家協会は平成14年8
月8日に設立されている。
  以上の事実から、代表者兼登録担当者である西川善蔵は、既に法人格のある
有限責任中間法人日本曳家協会の組織名で登録することを意識的に避けて、従
前の名称である日本曳家協会で登録し、しかもインターネット部門まで付け加
えている。又代表者には西川善蔵自らがなり、副代表者は、同じく除名決議が
為されている我妻悦雄になっているのであり、明らかに分派行動を意識した登
録内容であり、登録者住所が法人格ある申立人の住所と一致しているという一
事をもって登録者は申立人と認定することは出来ない。むしろ、登録者は申立
人の「有限責任中間法人日本曳家協会」とは別組織である「日本曳家協会イン
ターネット部門」であり、その代表者と登録担当者が「西川善蔵」個人と解す
べきである。
  よって、登録者は「日本曳家協会インターネット部門」であり、その代表者
である「西川善蔵」が、本件事件を争っていると見るべきであり、その「西川
善蔵」自身が登録者であると主張している所から、全体として見て、「西川善蔵」
が答弁書を提出しているものの、「西川善蔵」が「日本曳家協会インターネット
部門」の代表者であるところから、「日本曳家協会インターネット部門」も同時
に本件事件を争っているとみることが出来、従って、自ら登録者であると自認
する西川善蔵の他に登録者「日本曳家協会インターネット部門」も本件事件で、
応訴していると見ることが出来る。

(2)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標そ
の他表示と同一または混同を引き起こすほど類似しているか。
        代表者兼登録担当者のドメイン名は、「nihon-hikiya.gr.jp」である。
本件ドメイン名中「gr.jp」は当該ドメインがJPNICの管理のもので、かつ登録
者がグループであることを示すにすぎないから、登録者のドメイン名において
主たる識別力を有するのは「nihon-hikiya」の部分といえる。即ち称呼で「ニ
ホン  ヒキヤ」である。
  ところで、申立人は有限責任中間法人日本曳家協会である。従って名称の要
部である日本曳家協会のうち組織名である協会を除外した「日本曳家」は、称
呼で「ニホン  ヒキヤ」である。従って本件ドメイン名は、申立人の名称の要
部である「日本曳家」と同一または混同を引き起こすほど類似している。

(3)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有してい
ないこと
  本件ドメイン名は、申立人が「有限責任中間法人日本曳家協会」として法人
格を取得した後に、代表者兼登録担当者である西川善蔵が、任意団体として、
「日本曳家協会インターネット部門」の組織名称で登録したものであり、この
登録については申立人の事前の許可が無かった。本来なら、西川善蔵が、「有限
責任中間法人日本曳家協会」から許可を受けて登録すべきものである。
  にもかかわらず、代表者兼登録担当者が申立人の許可無く本件ドメイン名を
登録した。
  而も、代表者兼登録担当者は、任意団体として、(名称)も日本曳家協会イン
ターネット部門として登録した。代表者兼登録担当者は一応申立人に本件ドメ
イン名登録の事実を申立人に報告したが、報告の内容は『日本曳家協会のドメ
イン登録をしましたので「テコとコロ」等に掲載の程宜しくお願い致します。
http://www.nihon-hikiya.gr.jp』という内容のものであり、しかも代表者兼登
録担当者が経営する(有)西川総合建設名義であった。そして登録の詳細につ
いては何らの報告も無かった(甲8)
  従って、代表者兼登録担当者からは、本件ドメイン名の登録当初において、
登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有していること
の証明がなされていない。
  しかも、代表者兼登録担当者は、その後申立人より除名処分を受けており、
除名処分の効力については争いがあるもの、現在では別の団体、即ち「真日本
曳家協会」を組織して活動しており、申立人の組織からも地位を剥奪されてい
るから、現在の段階で、本件ドメイン名を登録することについての権利はない。
  よって、全体から見て登録者が、本件ドメイン名の登録についての権利又
は正当な利益を有していない。

  (4)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること
  代表者兼登録担当者は、現在「真日本曳家協会」と称して活動しているが、
なお従前の名称である「日本曳家協会」と語頭の「真」以外は、同一である。
  代表者兼登録担当者としては、従来在籍していた「日本曳家協会」の要部で
ある「日本曳家」と同一のドメイン名を使用することで、「日本曳家協会」の顧
客を「真日本曳家協会」に誘引しようとする意図の元に、本件ドメイン名を引
き続き使用していると考えられる。特に「真日本曳家協会」の実際に使用され
ている文字を検討すると「真日本曳家協会」の内、「真」と「日本曳家協会」と
は漢字のロゴが異なり、「真」の文字は「日本曳家協会」に比較して、文字が見
えにくく表記されており(甲11)、従って、本件ドメイン名を入力したものが、
「真日本曳家協会」のホームページにたどり着いた時に、「日本曳家協会」のホ
ームページに入ったと誤認することは、十分にあり得ることである。また代表
者兼登録担当者は従来、「日本曳家協会」に所属していたのであり、従って従来
所属していた団体の名称を引き続き使用することは、明らかに従来所属してい
た団体に対して営業上の利益を侵害する意図が伺われるのである。
  以上より、本件ドメイン名が、不正の目的で使用されていること明らかであ
る。

6  結論
  以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名
「nihon-hikiya.gr.jp」が申立人の法人名と混同を引き起こすほど類似し、登
録者が、ドメイン名について権利又は正当な利益を有していない、登録者のド
メイン名が不正の目的で登録され且つ使用されているものと裁定する。
  よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「nihon-hikiya.gr.jp」の登録
を申立人に移転するものとし、主文のとおり裁定する。

     2004年9月3日

     日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル
                                     渡    邊          敏
                                      (単独パネリスト)


別記(手続の経緯)

(1)申立書受領日
    電子メール  2004年6月7日
    書面        2004年6月9日

(2)料金受領日  2004年6月7日  189,000円
     申立人はセンターに対して上記の日に規定料金189,000円を支払った。
(3)ドメイン名及び登録者の確認日
    センターの照会日(電子メール)2004年6月7日
    JPRSの確認日(電子メール) 2004年6月7日
      <確認内容>
    申立書記載の登録者は、ドメイン名の登録者であること
    登録担当者は、西川善蔵であること

(4)適式性
  センターは2004年6月9日、申立書がJPNICのJPドメイン名処理方針、
JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則、JPドメイン名紛争処理方針の
ための補則の形式要件を充足することか否かを審査したところ、充足している
ことを確認した。

(5)手続開始日         2004年6月9日
     手続開始日の通知 2004年6月9日
            JPNIC、JPRSへ(電子メール)
            申立人代理人へ(電子メールと郵送)

(6)登録者・登録担当者への送付、内容及び送達
1)  2004年6月9日、センターは申立書及びび申立通知書を登録者及び登録担
当者へ電子メール、FAX、郵送(配達証明付き)で送付した。
  また、証拠並びに証拠の一覧及び説明については郵送のみ。
2)  センターは答弁書提出期限が2004年7月7日であることを通知した。
3)  2004年6月10日、登録者が上記書類一式を受領。
  なお、電子メールによる送達は出来なかったが、郵送による送達は配達証明
により確認した。

(7)答弁書の提出
  2004年7月6日、登録者より郵送にて答弁書及び証拠が届いた。
  なお、電子メールによる送付がなかったので、電話により送付を依頼し、翌
7日、電子データによる答弁書を受領した。

(8)パネリストの選任
  申立人及び登録者は1名による審理・裁定を要求。
  センターは2004年7月7日、方式審査をし、パネリストの選任作業に入っ
たが、登録者は、日本曳屋協会インターネット部門であるにも拘らず、個人に
対する申立てであることに気付いた。
  そこで、申立人代理人に対し、取下げ勧告をしたところ、7月21日、センタ
ーは、郵送による取下書を受領した。なお、JPドメイン名紛争処理方針のため
の手続規則第17条(a)の規定により、取下げには登録者の同意を得なければな
らないので、センターは、登録者代理人と連絡を取ったところ、登録者代理人
は7月30日まで夏季休暇を取っているので、同日に着くように、送付してほ
しい旨の要請があり、センターは7月28日に登録者代理人に宛てて取下書を
送付した。
  その後、登録者代理人より連絡がないので、8月4日、電話により登録者代
理人に連絡をしたところ、取下げに応じられない、とのことであったので、パ
ネル選任作業に入り、同日、以下のパネリストを選任した。
    パネリスト          渡邊敏
    中立宣言受領日      2004年8月25日

(9)紛争処理パネルの指名及び予定裁定日の通知
    ①  裁定予定日  2004年8月25日
    ②  両当事者、JPNIC、JPRSへの通知  2004年8月5日
    なお、両当事者の送付、送達については(5)および(6)と同じ。JPNIC、JPRS
へは電子メールのみ。

(10)パネリストへの指名書、一件書類の送付
      送付日  2004年8月5日(電子メール、郵送)

(11)裁定期限日(予定)の延長通知書(裁定期限日2004年9月6日)の送付
       送付日  2004年8月24日
       なお、両当事者の送付、送達については(5)および(6)と同じ。JPNIC、
       JPRSへは電子メールのみ。

(12) 2004年9月2日、センターは、申立人代理人から、ファクシミリによる
申立書訂正書を受領した。